ウォッチメンとかアメリカン・アキラとかマーサ・ワシントンとか

ウォッチメン』予告編 かっこいいすね しかしほんとに原作そのまんまだな

その原作を久々に読み返したら面白かった。
ともかく仕掛けが多い作品で、絵の中にメタファーやシンボル、サインが詰め込まれていて、読み込み始めるときりがない。アラン・ムーアパラノイアだなあ。しかしパラノイア的な世界設計というのはこの作品の主題でもあるので、つまり主題と方法がかっちり一致した傑作です。あんまりかっちりしてるので、ちょっと読んでて息苦しくなるけど。

これは中野貴雄監督のblogで知ったパロディ、土曜の朝にやってそうなアニメ版ウォッチメン

原作のネタを丁寧に拾ってはいちいちだいなしにしてます。すげー。何が作者にここまでさせるのか。

ついでに、同じ人が作ったアメリカン・AKIRA

これはもうちょっと頑張って欲しかったところ。でも最後に出てくるロゴがベタで笑った。しゃべるバイクもヒドいねぇ。

ところで『ウォッチメン』のデイブ・ギボンズと『ダークナイト・リターンズ』のフランク・ミラーが組んだ"Give Me Liberty"っていう1990年の作品があります。10年くらい前、別にアメコミ好きでもないのに何故かペーパーバックを買いました。
これがかなり面白かった、ということを思い出したので今更ながら紹介してみる。多分既に有名な作品なんだけど。

Give me Liberty (Martha Washington)

Give me Liberty (Martha Washington)



えーどういう話かというと、近未来のアメリカで、スラムに生まれ育った黒人女性のマーサ・ワシントンが、軍に入って動乱の時代を生き抜き、自分の自由を勝ち取る為に闘うというお話です。スーパーヒーローの類いは出てきません。
作品としてはヒットして、このあともマーサ・ワシントン・サーガとして何作か続いた模様。


これがマーサ(女性)。同僚にレイプされかかって相手をぶちのめしたところ。ヒロインとしての萌えとか求めたら蹴りつぶされそうです。

ともかくこの作品、個人は強くなければいかんのだ、へなちょこリベラルなんて役に立たないのだという世界観が貫かれてまして、実にまあなんというか、うへぇって感じ。でも表現が極端で面白いんだよね。近未来という設定の中、アメリカをとことん戯画化してます。

TV映えがするレクソール大統領(レーガン似)の最初の就任パレード。彼は強権的な政治を行い…

13年後、同じ大統領の就任パレード。アメリカはすっかり軍事国家になっています。

ところどころに近未来のテレビ番組が挿入される。
これはCM。

放射能については人を怖がらせるようなデマを飛ばす連中も多い昨今ですが、ご覧の通りスーパー・ビヒモスに来れば良い食材がいっぱい買えますヨ」「ソーセージも、ほら、こ〜んな!」「大きいことはいいことだ、ビヒモス」店の背後には原発のシルエットが…アホだ。

狂信的な原理主義者の公衆衛生局長官。「病んだアメリカを救うには国土をレーザー切除手術するしかないのです」みたいなことを言ってる。好きだなーこのキャラ。

健康への悪影響から牛肉が非合法化されたので、ファストフード産業と軍が戦争してます。南米のジャングルで巨大なマスコット人形型ロボットと軍が戦闘、という悪夢のような光景。


物語の終盤近く、内戦で一時的に分裂したアメリカの図。西では某巨大テーマパークの動物ロボットが独立を求めて人々を襲い始めたとか、東部では戦闘的フェミニストたちが女性至上主義の政権を樹立とか、そんなネタ国家が多数出現してます。

全体としてはコメディではなくシリアスな近未来アクションドラマなんですが。フランク・ミラーはあの無かったことになっている『ロボコップ2』の脚本にも関わってますが、あれと近いものがあるかもしれない。ってもはや思い出せないけど『ロボコップ2』。