バカ姉弟 5巻
これ最終巻なのかな。はっきり書いてないけど。
でも終わりだとしたら、とてもいい終わり方だと思った。いや終わりじゃなくても全然いいですけど。というか続きがあればそれはそれでうれしいけれど。
- 作者: 安達哲
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/06
- メディア: コミック
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子供は世界の辺境にいる、なんて、ちょっと民俗学みたいな。そういえば『バカ姉弟』には民俗学っぽいモチーフが何度か描かれます。姉のおねいが近所の老人がお参りする対象になったり、古い遺跡から姉弟そっくりの図像が出てきたり。バカ姉弟は神仏妖怪のたぐいか、座敷童や仏教の○○童子の変化か。まあ、実際は大きな地主の家の子供なんですけど。お父さんとお母さんは共にスケールの大きな人物で、なかなか日本にはいないようです。だからバカ姉弟は古い日本家屋に二人っきりですんでいる。二人は幼稚園にはたまに行くけどまあだいたいは忘れて町で遊んでいる。地域の人たちが一緒に姉弟の面倒を見ています。二人っきりで生きているけど、別に、親にネグレクトされているかわいそうな子供ではない。というか、二人は完全に幸福な子供たちです。バカ姉弟は、学校とか家族と言う小さな社会から外れたところにいます。二人の前には社会のフィルタ抜きで、完全な世界が丸ごと投げ出されています。基本的に小さな町内の話だけど、でもこの町の全ての場面に二人は猫のように入り込みます。そうして世界は二人を驚かし、二人は世界を驚かせます。
そして時には、隣町にいくように平然と飛行機を乗り継いでパリに行ったりもするのです。家族旅行の待ち合わせがドゴール空港の前なのでした。二人の前には町内も海外も違いはない。
ええと天才の話と言うのから逸れてしまった。バカ姉弟の姉の方にピアノの才能があるというのはこれまでの巻でも繰り返し描かれていました。この子は才能以外にも何やら神仏だの先祖の霊だのにも愛されているらしいことが暗示されています。暗示っていうか明示か。寝てるとこに先祖の霊がわざわざかわいがりにきたりするしな。
まあともかく、5巻の最後で成長した姉は世界に向けてその天才を示します。天才故の苦悩とか悲劇とか、そういうのは特になし。そういうのはもう、いいよ。天才は見てるだけでびっくりするんだから、そしてその驚きは、幼児が世界を見た時に感じる驚きと全く一緒なんだから、そこだけ描けばいいじゃないか。と言われているような気がします。天真爛漫なまったき天才。弟は天才じゃなかったみたいだけど、まあそれも人生。
全ての子供時代がバカ姉弟みたいに恵まれたものだったらいいなあ。そして、世界はでかくて美しくて楽しい驚きに満ちているよって全ての子供に言うことができたらどんなにいいだろう。そんなことをちょっと思いました。ナイーヴ過ぎますかそうですか。でもそう思ったのよ。
あと、15年経っても志津香さんがきれいで安心しました。キャラの一人一人に作者の愛情がしみとおったいいマンガだなぁ。