4月に観た映画メモ

メモだけでも書かないと忘れてしまうでな。

ドライヴ

これは変な映画でよかった。日常世界に対する異物としての暴力の描き方は塚本晋也を連想した。ところどころリンチ的だったりもする。でもって監督はホドロフスキーへのオマージュだと言ってるそうで。
ストーリーだけ見ると”惚れた女(旦那あり)のために暴力の世界に戻っていく男”の物語で昔の任侠映画みたい。そんなカルト・ハードボイルド映画の制作・助監督はフランク・キャプラ三世。いやそれはまあどうでもいいけども。
ともかく、変な面白い映画で、私は喜んだのだった。

戦火の馬

そういやヘミングウェイの短編で第一次世界大戦での戦場の馬の死体の描写があったっけな、と観ながら思って、家に帰って古い文庫を引っ張りだしてその『死者の博物誌』という短編を読み返したら、馬じゃなくて騾馬だった。
『死者の博物誌』は戦場での死の情景をシニカルに綴った短編で、ヘミングウェイは騾馬や馬が死んでいく光景や軍医が傷ついた兵士を懐中電灯の光で診察する光景を”ゴヤを呼んできて描かせたい”と書いている。子供向け原作で血や負傷の直接的描写を避けた『戦火の馬』では、ゴヤ風のグロテスクとはいかないけれど、無益で悲惨な泥まみれの危険な労働としての戦争というイメージは良く伝えていた。
最近の(昔からかもしれないが)スピルバーグの映画は画面が不意に宗教画ぽくなる瞬間があって、こんなのに感動していいのか、安易じゃないか、と思いつつ私は毎回感動してしまうのだけど、この映画だと鉄条網のあたりがそうだった。まあクライマックスだからもとより感動させて当然ではある。でもなんか、あの画面に漂う光をみてると、教会に来たような気持ちになってしまうのだ。

ヘルプ

映像も俳優もいいけど、今こういうテーマで撮るんならもうひとつ何かいるんではなかろうか。

アーティスト

これもいい話ではあるし最後の仕掛けも良かったが… 

アンダーグラウンド

びっくりするほどヨーロッパ! びっくりするほどヨーロッパ!(全裸で白目を剥いて尻を叩きながら)
この映画の、俺っちの国の近代史をこの映画で全部やるぜ的な、ヤケクソじみたパワーは好きだ。ただしギャグは洗練されてないけど。でも最後のところは感動する。ああ彼らはこういうところにたどり着くんだという特別な感慨がある。
時代状況を限られた空間に落としこむための仕掛けと笑いの使い方はちょっと井上ひさし作品を連想した。