ペントハウス

これはいいドートマンダー映画。いや実際にはドートマンダー物じゃないんだけど。
ドートマンダーはアメリカの小説家ドナルド・E・ウェストレイクが創造したキャラクターだ。天才的犯罪プランナーのドートマンダーが個性豊かな仲間たちを集めてすったもんだしながらお宝を盗むというクライムコメディのシリーズで、何度か映画化もされてるが、映画化作品はこれまでのところ『ホット・ロック』以外はあまり評判がよろしくない。
ま、映画化された方はみてないんだけど、小説のドートマンダー・シリーズが私は好きです。キャラクターが皆魅力的で、そこに描かれるニューヨークの空気がいい。お互い他人のことを気にしない街で、おっさんたちが集まってガチャガチャしながら仕事をなんとかやり遂げるという、そのガチャガチャ感がとてもいい。
で映画『ペントハウス』なんだけど、ここには私の好きなドートマンダー・シリーズのガチャガチャ感があるなあと。草臥れたジャンバー来たおっさんたちが、プラスチックの蓋がついたコーヒーのカップを片手に窓際の席に集まって何やら企んでるあの感じ。事前には緻密な計画に思えたものが、現場に出てみると隙だらけだったことが否応なくわかるんだけど、でもやるんだよ!とばかりにエイヤと乗り越えてしまう。そんな雑な、でもガッツのある連中の姿が良い。町工場のおっさん系盗賊団って感じ。
まあ、展開上明らかに無茶な部分がひとつふたつ…みっつ…4つくらいあるけど、いいじゃないの細かいことは。観終わって楽しかった。そして、誰かこの感じでドートマンダー物を新しく撮ってクレ、と思うのだった。