パイレーツ・ロック

たまたまタダ券があったのでとある晴れた休みの日のお昼に見に行った。晴れた日に見るのにはとても適した気分のイイ映画だった。そんな外出日和に映画館にいくのもどーよ、というのはともかく。
喫煙&マリワナで高校を退学になった英国の青年が、母親の命令で"海賊放送局船"に乗船する。それから繰り広げられるのは背骨も軋む労働の日々、では全然なく、童貞中学生の妄想がそのまま現実化したような幸福な小宇宙なのだった。時代は67年、ロックがまだまだ明るい幻想で満たされていた頃。お硬いBBCは一日に45分しかポップスを流さない。そこで海賊放送局は海に浮かぶ船から24時間ロック/ポップスを流しまくる。市民の皆さんは海賊放送にチャンネルをあわせて踊り、不埒なDJが史上初のFワードを口にする瞬間に耳をそばだてる。音楽とラジオの結びつきがもたらす時代の幸福な一体感をあらわす場面を映画はこれでもかと畳み掛け、盛り上げる。映画の作り方はほとんどミュージカル。登場人物は歌こそ歌わないものの、ロックの名曲が間断なく流れ続け、人々は踊り、ポーズをきめる。各キャラクターやエピソードのディフォルメの仕方もミュージカル的と言うか、実にマンガ的。いい意味で浅く、一面的。重厚なリアリズムより平板な類型キャラたちを上手く使って語る方法を選んでる。ビル・ナイの演じる海賊放送局オーナーのキャラとかすばらしい。細身がかっこよくてくねくねしてて決めるとこはピシッと決める。最高だ。
それにしても英国の皆さんはほんと紅茶よく飲むのな。DJがひとしきりマイクに向かって吠えた後に飲むのがマグカップに入ったコーヒーでも缶ビールでも無く、ティーカップに入った紅茶をすすると言うのがなんだかお国柄だなーと思いました。一方英国政府の会議のテーブルに並んでいるのは水と、皿に盛られた硬いビスケット。でかいマリービスケットみたいに見える。
ま、ラストとか、茶番と言えば茶番なんですが、そこに文句言うような映画でも無かった。しかし船と一緒に沈んだレコードはもったいないよね… たのしうございました。