恋愛睡眠のすすめ

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6歳の男の子がシャルロット・ゲンズブールに恋するお話だった。とても切ない。
実際は主人公は6歳じゃなくて20代の青年なのだけど、頭の中身は夢と現実の区別がない6歳の男子そのままといってよく、子供の気持ちが大人の身体で拡大されるのでよけい切なくなる。
夢と現実が激しく混乱する様子は『パプリカ』か『スキャナー・ダークリー』かってなもんで、ただこの映画で夢と現実の境界を曖昧にするのはSF的ガジェットでもなければドラッグでもない。ひとえに主人公の青年の妄想力による。天然です。
子供の世界は統合失調症的である、ということを誰だったか精神科筋の人が言ってた気がする。この映画の主人公の青年が生きる世界は完全に夢と現実の区別がない。子供っぽいというより、ほとんど病的な域に達している。何しろ自分が仕事してるのが夢の会社か現実の会社かも区別できなくなるんですぜ。
映画は夢も現実も区別せず描く。だから観客も主人公の青年同様、夢と現実の果てしない混乱の中に放り込まれる。下手したら悪夢のような不条理映画になってたんじゃないか。リンチとかシュワンクマイエルとかみたいな。
そうならなかったのはひとえに映像のアイディアと主人公を演じたガエル・ガルシア・ベルナルのかわいらしさのおかげだと思います。あ、もちろんシャルロット・ゲンズブールも…しかし、基本的にかわんないねこのひとも。そりゃ彼女が隣に越してきたら、6歳児は恋しちゃうよなあと思った。
段ボールでできたテレビスタジオや未来都市の映像はすごく楽しい。特に未来都市…あれは私が小学校の時夏休みの工作で作ろうとした箱庭のパクリだ! いや私は材料(ヤクルトのびん、トイレットペーパーの芯etc.)を集めただけで結局完成しなかったけど。あーこの映画で完成品が見れてよかったと思った。
しかし、映像と主人公の無類のかわいらしさにもかかわらず、これは非モテの心性を描いた切ない映画だと思いました。モテないというのは多くの場合妄想の中での勝手な挫折だったりする。戦う前に妄想の中で負けてる。情けない。でもなあ。どんな人間だって自分の妄想の奴隷だろう、いくらかは。と言いたい。
そんなわけでなかなかに切ない、痛みを感じさせる映画でした。まあ6歳児がシャルロット・ゲンズブールに恋すればそういうことにもなる。