『リトル・ミス・サンシャイン』

先週観ました。いい映画、幸せな映画でした。主演の女の子がアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたそうで、受賞すれば史上最年少の受賞者とか。私は賞にはまったく興味がないけど、この映画の彼女を観ると、オスカーとれたらいいなあと思う。なんつーかね、この子にトロフィーをあげたい。
この子が演じるのは、ミスコンに出てミスに選ばれることを夢見る小さな女の子の役です。ひょんなことからカリフォルニアの本大会に出られることになって、その電話を聞いた彼女はきゃーーーーーって叫ぶ。全身に喜びをみなぎらせて、家の中を夢中で駆け回る。喜びではち切れんばかり、という形容があるけど、ほんとにそんな感じ。そういう姿を見たので、彼女にはなんでもいいから賞をあげたいなあと思います。

問題を抱え過ぎるほど抱えた家族が、おんぼろの黄色いワーゲンバスに乗って、末娘のミスコンのためにカリフォルニアを目指すお話です。
黄色いワーゲンバスってのが、いいねえ。ワーゲンバスは昔からいい車だなあと思ってたけど、これ観るとあらためていいなあと思います。たとえ家族全員で押さないと走り出さないようなボロ車でも。ブレーキもきかなくなって、最後にはドアも外れてガランと落っこちてしまうけど。
でも大丈夫。なんだかしらないけど大丈夫、という気がしてしまうのは、丸っこくてかわいいけど頑丈そうなワーゲンバスだからか。

シネスコの横長のスクリーンをうまく使った画面構成に、70年代風のちょっと懐かしい色彩。画面デザインがうまいな、と思ったらCMを手掛けていた監督さん(たち)だそうで。
こう書くとオシャレっぽさを警戒する人もいるかもしれん。でもこの映画、基本はベタな人情喜劇です。最後のドタバタも適度な間延び感があれだ、ジョン・ランディス作品のようだ…ってのは言い過ぎか。あそこまでゆるくはないか。

この映画が描く家族はそれぞれが問題を抱え過ぎるほど抱えてます。理想の家族とは対極なんだけど、それでもいいなあと思うのは、みんながちょっと距離を置いて自分の足で立とうとしてるとこ。こういうのはアメリカ的なのかなあ。価値観も信条もバラバラなんだけど、無理に価値観を協調させようとはせず、かといって離れてしまうこともなく、その場所にい続ける。その人間関係がほぼ同調圧力とイコールになってしまう世間の人間からすると、すごく不思議でうらやましい光景に見えます。

この映画に出てくる子供のミスコンって、まあ悪趣味でどうしようもない代物なんだけど、主演の女の子にとっては夢のステージなんですね。クソだけど夢、という状況を特に整理せずに描いてて、いいなあ、と思いました。子供と大人の見る世界は違って当然。それでもまあ、一緒に走ることはできるよねっていう。