欲望のバージニア

音楽と脚本をニック・ケイヴがやってる。去年Youtubeでこのサントラを聴いたら、White Light / White Heat のカントリーヴァージョンがあった。パンク等の名曲をカントリーでカバーしてるらしい。これは観に行こうと思ってたが、こんな、うっかりみすごしそうな邦題になるとは思わなかった。原題はLawless。
禁酒法時代、バージニアで密造酒を作ってた男たちの話。
Lawlessは法が無いということだけど、禁酒法のような誰もが守れない法を作ると実質的な無法状態が訪れるというのはちょっと面白い。まあ当たり前ちゃ当たり前なんだが。
かつて戦争と疫病を生き延びたことから不死身と噂される三兄弟が、バージニアで密造酒を作っていた。彼らが無法の一時代をどう生き延びたか、という話で、こう要約するとなんだかタフな男たちのタフな物語みたいだけど、けれども、いや、だからこそ、なのか、三兄弟が自分たちのイノセンスをいかに守ったか、という話になっているのだった。
三兄弟の末っ子のシャイア・ラブーフつぶらな瞳はわかりやすくイノセントで、ああこいつが酷い目にあって兄たちが復讐するのか、それとも兄たちが酷い目にあって三男が復讐することでイノセンスを失うのか、などと思いながら観てたが、ストーリーは適度に予想をはぐらかしつつ進む。
タフガイな次男(トム・ハーディ)が意外な純情童貞マインドを示すあたりで、実はこいつが一番イノセントだったのかと思ったりもする。
というか、この映画でイノセンスというのは三兄弟にわけ持たれた特質なのだ。三兄弟の不死身ってのもそういうことなんだよな多分。彼らはタフなのではなく、自分たちが不死身だと信じられるくらい素朴で純情なのだ。
だからこれはタフでリアルな南部の"男"の歴史を語る映画に見えつつ、実は寓話的な"男の子"たちの物語で、結末もそのように閉じられる。