夢と検索

自動車の暖かい後部座席でたまに眠りに引き込まれそうになりながら、窓の外を眺めていた。昨夜ネットで検索中に読んだ二つの記事のことを考えていた。一つはウィキペディアの記事でもう一つはなんだったか…ともかくこの二つの記事には非常に興味深い共通性があって、それは…えーと、よく思い出せないけど、それに気づいたときすごく面白いと思った…ん、だったが…いや、どういう記事だっけ…
そもそも、どんな言葉を検索してたんだっけか…
何も思い出せない…

いくら思い出そうとしてもGoogleのおぼろげな映像しか浮かんでこない。しばらく考えて、あ、夢だった、と気づいた。車の中でうとうとした一瞬に、"検索して読んだ記事が面白かったという夢"を見たのだ。そうして夢から醒めながら、その夢を現実の記憶のように考えていたのだった。

検索するというのは限られた検索語から膨大な情報の海への道を開くということだけど、夢から醒める時の感覚は、ちょうどその逆のような感じだ。無意識に渦巻く膨大な情報が、風呂の栓を抜いたあとの水のようにしゅるしゅると抜けていって、数個の貧しい印象だけが残る。
私は夢の中で何かを検索して、いくつかの記事を読んで面白いと思った筈なのに、目が覚めてみるとその記事の内容はおろか、何を検索したかさえ思い出せない。Googleの検索窓だけしか思い出せない。
正しい検索語を思い出し、無意識におけるGoogleのURLを知ることが出来たら、あの夢の記事を私はもう一度読むことが出来るのだろうか。

あるとき荘子は胡蝶について検索していたが、検索結果を夢中で読み込むうち、荘子が胡蝶を検索しているのか、胡蝶が荘子を検索しているのかわからなくなったという。