ナントカ還元水

ちょっと前に、某社の浄水器の説明会を聴く機会があった。正確には浄水器じゃなくて整水器というのだそうで。
活性酸素は身体に悪い、というところから営業の人の話は始まった。整水器を通して作られた電解還元水活性酸素を消してくれる…らしい。
用意した透明のコップに水道水・市販のアルカリイオン水、整水器から出た電解還元水を入れて何やら試薬を入れる。水道水はほとんど変化なし、アルカリイオン水はややピンク色、電解還元水は濃いピンクになった。色が濃いほど還元力が強いのだという。
(要はアルカリ性ってことだよね…)
2つの透明のコップにお茶の葉を入れ、片方に水道水、もう一方に電解還元水を入れると電解還元水の方が濃い色のお茶が出る。
「水の粒が小さいからお茶の成分がよく出るんです」
(いや、お茶の色もpHで変化してるだけでは…)
「これを飲み続けるとしばらくの間、臭い汗が出ます。身体にたまった老廃物が汗に溶け出すからなんですねえ」
筒井康隆の『薬菜飯店』か…怖いです)
「この水でご飯を炊くとこれがまた良いのです」
といって、コップに入れた米に水道水と電解還元水をそれぞれ注ぐ。水道水は白く濁るだけだが。電化還元水はやや黄色っぽくなった。
「というのもお米の表面が酸化しておりますでしょう?そのせいでこんなふうに黄色くなる」
これは知らなかったんだけど、後でしらべたら米ぬかはアルカリ溶液で黄色くなるらしい。
市販の弁当やパンに入ってる食品添加物が怖い、という話になって、先ほどの試薬でピンク色になったコップの水に市販のパンを浸した。すると水のピンク色がすっと薄くなる。「食品添加物のせいで酸化してるからです。そこでこの電解還元水を…」コップにさらに電解還元水を注ぐと、再びピンク色が濃くなった。おお、と驚く聴衆。
(単にpHが変化してるのを見せられてるだけでは…)
(ていうか、別にアルカリ性アピールはいいけど、なんでそんなアルカリ性の水が万能薬みたいな扱いになってんだ?アルカリ性のまま身体の中に入るわけでもないだろうし…)
まあ仕組みは謎だが飲めば健康になることがデータで示された、という話でも全然いいんだけどーーというかこの場合その方が説得力あると思うんだが、その手の話は一切でないな…と思ってたらグラフを出してきた。
「この電解還元水を飲んだ人とそうでない人との比較です。飲んだ人はそうでない人に比べて血糖値や血圧が明らかに下がっている」
ほう、と思ったけど、よく見たら"電解還元水を飲んだ人"と"飲んでない人"の比較。
(単に水飲んだことによる効果かもしれないんだから、水道水飲んでる人と比較しないと…)
んで後はこの整水器、十数万円するけど毎日ペットボトルの水を飲むとすれば五年でこれだけかかるわけで云々、お得ですヨというコストの話になった。
(でも普通、他メーカーの同種の機器と比較せんかね?)


実際にはカッコ内の疑問は一切口にしませんでした。何故なら弁当が出たので…私はその弁当を食べるのに忙しかったので……いや、すいません空気を読みました……


しかし、そもそもなんでこれが「健康にいい」ということになるのかがよくわからんな、というのが感想。身体全体の健康みたいなマクロな話と酸化還元のミクロな話を繋げるのはかなーり大変だと思うのだけど、その間の説明がすっぽかされてる。なのになぜ周囲の人達は「ナルホド」みたいな顔をしてたのだ。私がわかってないだけか。


その会社のサイト見たらもっとちゃんとした説明があるかもしれない、と思って検索してサイトを見て、ちょっとびっくりした。
「水の粒が小さい」とか「飲むと臭い汗が」云々のようなヘンなことは書いてない。活性酸素云々も、表面にはない(過去記事の中にはあったみたい)。その整水器が、要はアルカリ性の水を作る機器であることも説明してある。つまり、科学的には穏当なことしか書いてない、ように見える。
そのせいで読んでも健康にどういう効果があるのか実に漠然としている。胃腸にいい(確かにアルカリ性の水は胃酸過多の人にはよさそうだ)ということは書いてあるが、それ以上の効果についてはいろいろ期待できるがただいま研究中、乞うご期待…という程度。
それでいて「健康にいい特別の水」というムードは一生懸命醸し出そうとしていることが伺える。
いやあ、なんというか…大変です。ああいうの売るのも。