夜の中洲で日野皓正

夕方7時。今日は一日立ってて脚に血が溜まっとるなと思いつつその疲れた足で自転車のペダルふみふみ中洲方面に向かう。昨日から中洲ジャズというのがあってて中洲周辺の数カ所にステージ設置して無料野外ライヴをやってるのだった。スケジュールもよく調べてないのだがともかく21時から貴賓館ステージで日野皓正がやるらしいのでそれ見に行こっかネ、と、ペダルふみふみ。


まずはキャナルシティに行って軽くメシを喰い、Monday満ちるをしばらく聴いた。ステージを囲んで観客はぎっしり。
Monday満ちるのリラックスしつつ真剣なスキャットが鈴木よしひさのギターとよく響き合って良かった。聴いていたかったがそろそろ時間なので30分ほどで抜け出し、自転車で貴賓館ステージに移動。


夜の中洲久々に来たけど、蒸し暑い空気のせいかいつにも増してアジアっぽい…混み合うタクシーの間を自転車で抜けてるとなんだか中国みたいだなと根拠なく思う。デタラメ中国語をつぶやきながら中洲中心部を横切り、川辺の自転車置き場に自転車を置いて貴賓館ステージに歩いて向かった。
川辺にはウナギ釣りの屋台が出ていた。屋台の店主のおばさんが傍らに置いた液晶テレビをずっと観てるのがなんだか面白い。夜を背景にくっきり明るく浮かび上がる液晶テレビの四角い画面。その前にある発泡スチロールの四角い水槽の中には20尾ほどのウナギが静かに沈んでいる。水槽の方も実は液晶だったりしてな。


川辺から会場へ続く福博であい橋は人も多く割とカオスだった。"一生懸命修行中"という札を掲げた男性がサックスを吹き、LEDで縁がピカピカ光るサングラスをかけた男がカラオケを歌い踊り、和装に三味線の女性が猥歌を歌っておひねりをもらってた。
橋を渡ると人混みがだんだん濃くなって、貴賓館前に組み立てられたステージの前はかなりの群衆が集まっている。年齢層は結構バラエティに富んでる感じ。若いのもいるけど白髪の方もいる。いい感じじゃないですかね。


飲み物どうしようかなーとテントの方を覗いてたらいきなりステージの方で演奏が始まった。タメとかそういうのはないのだった。慌ててステージの前方に移動する。
で日野皓正さんですが、良かったです。昔かっこよかったのは知ってるけど今でもかっこいいんだからたいしたもんだと思う。なんとなく、大仏のようだ、と聴きながら思った。音の大仏。他の楽器が何やっても日野皓正の出す音の装飾になってしまう。そういうデカイ存在感。
しかしその大仏も、ベーシストの息子さん(日野賢二さん)が前に出ると後ろでケーブルさばいたりマイクを用意したりし始めるのだった。で、息子さんがラップをはじめて父親も横で応じ、なんだか急に親子漫才になってきたなと思いながら見るうちに笑いがこみ上げてきた。
そうだなんかこういう笑いを笑いたかったんだよなー、と思った。最近は苦笑とか嘲笑、自嘲の笑いばっかりで、野外で生音を聴きながら笑うような笑いが不足してた。
最後はトランペットで"ふるさと"をひとふし奏でて終わった。不思議と胸に迫るものがありました。
45分はいかにも短いけど、久々の生音、楽しかったなと思いながら自転車を押して帰った。別のステージでまだやってるらしい音が遠くで聴こえた。


脳内の壁紙はこんなんでした。なぜつげ義春なのかは自分でもわからない。