で携帯で『パンドラの匣』を読んだのだけど

なんだかやけにポジティヴで笑うなー。いや面白いですけど。
今読むと別の意味で面白いって部分も多々あって、

おれは、生れてから、こんな赤恥をかいた事はねえのだ。育ちが、悪くねえのです。おれは、おやじにだって殴られた事はねえのだ。

 …なんかアムロみたいな事言ってる人がいる。

よく挙げられる例ですけれども、鳩が或る日、神様にお願いした、『私が飛ぶ時、どうも空気というものが邪魔になって早く前方に進行できない、どうか空気というものを無くして欲しい』神様はその願いを聞き容れてやった。然るに鳩は、いくらはばたいても飛び上る事が出来なかった。つまりこの鳩が自由思想です。空気の抵抗があってはじめて鳩が飛び上る事が出来るのです。闘争の対象の無い自由思想は、まるでそれこそ真空管の中ではばたいている鳩のようなもので、全く飛翔が出来ません。」
「似たような名前の男がいるじゃないか。」と越後獅子はスリッパを縫う手を休めて言った。
「あ、」と固パンは頭のうしろを掻き、「そんな意味で言ったのではありません。これは、カントの例証です。僕は、現代の日本の政治界の事はちっとも知らないのです。」

 …今も"似たような名前の人"がいるね。孫か。この部分、"自由思想"は反抗・変革の思想であって反抗の対象がなければ無だという話なんですが。

昨日の御訪問、なんとも嬉(うれ)しく存じました。その折には、また僕には花束。竹さんとマア坊には赤い小さな英語の辞典一冊ずつのお土産。

 …病院の訪問客が看護婦さんへの"気の利いた贈り物"として持ってくるのが英語の辞書ってとこがいかにも終戦直後だなー。


・越後先生は私の脳内ではじゃりン子チエの花井拳骨先生でレンダリングされました。
・主人公が無自覚で無根拠なモテ男子ってのは現代のラブコメ漫画みたいですな。
・オチの部分は素朴な叙述トリックといえなくもないな。脇役っぽく書かれていた人が実はヒロイン的な美人でした、っていう。二人の女性の間でのフォーカスの移り変わりがすごく上手い。