文藝別冊・総特集吉田戦車

林檎 (吉田戦車氏の描く女性は)こういう風に生きたいっていう理想の女性像を提示してくださってると思います。
吉田戦車椎名林檎スペシャル熱愛対談/文藝別冊・総特集吉田戦車

吉田戦車 (文藝別冊 KAWADE夢ムック)

吉田戦車 (文藝別冊 KAWADE夢ムック)

執筆陣がやたら豪華&豊富ということで一部で話題のムック。執筆者リストを見ると何か大きな賞をとった時の記念本みたいな豪華さです。いろんな人のエッセイの他に吉田戦車日記1999〜2008(スピネット掲載のやつ)、対談三本、川崎ぶらによる三万字インタビュー(ひたすら好きだった唄の歴史を語る)など。評論的な内容はあまりなく全体にファンレター集みたいな感じだけど、ファンブックとしては正しい本。吉田氏は読者からもマンガ家仲間からも編集者からも愛されてるなあ、ということがよくわかります。前衛性と安定感を兼ね備えためったにいない存在だよなあ。
畑中純吉田戦車本で一体何を、と思ったら『伝染るんです』を版画にしてました。木版の斉藤さんスゲェ。
ペンネームの名付け親でもある編集者の芹澤氏によるデビュー当時の話とか、朝倉世界一との対談での88年頃のエロ本周辺にあつまってたマンガ家グループの話とかが面白かった。
あと祖父江慎のエッセイがちょっと興味深かった。祖父江氏の前衛的で破壊的なデザインワークを、吉田戦車氏は引き留める役割らしい。デザインはデザイナーが自由に思うままにやった時より、クライアント等と対立してケンカしながら作った時の方がよいものが生まれやすい、という話を思い出した。いや別に吉田氏と祖父江氏がケンカしてるわけじゃないです。ただ両者の微妙な齟齬、「うまくいかない」という感じこそが多分デザインの原動力であり、成果でもあるという話。