『夜露死苦現代詩』都築響一

夜露死苦現代詩

夜露死苦現代詩

以前、古いカブで海の近くの道路を走っていた時、走りながらぼんやり詩について考えた(危ないyo)。日本の詩は今どこにあるのかなーということを考えた。目の前を斜めにのびる車の影を眺めながら、遠くに海からの風を感じながら、なんだか詩のようなものがすぐそこにあると感じつつ、しかしそれを捕まえるためのことばがない、と思った。うまいこと言えんのよ。今何かを言えばそれはファンシーかヤンキーかどっちかになってしまう。もはやファンシーでヤンキーなジャンクの中にしか詩の行き場はないのか。そんなことを思ったりした。
夜露死苦現代詩』が集めているのは痴呆老人の吐き出すランダムな言葉/死刑囚の俳句/ギャングスタ・ラップ/暴走族の連中が学ランに刺繍する漢字の多いポエム/スパムメールの過剰なレトリックetc。ひたすら低い位置で書き付けられ、吐かれ、消費される言葉たちの群れ。低いところから高いところ(この場合限られた読者しか読まなくなってしまった現代詩)を挑発するというのはよくあるやり方だけど、うまくいってます。技が効いてる。かつて根本敬VOWも同じように路上の詞を収集した。いつの間にか(いつでもそうだったのかもしれないけど)路上にはジャンクな詞の山ができている。この本はそんなジャンクの山、夢の島の裾野の風景を切り取ってみせてくれる。その上で、清潔な現代詩に向かって夜露死苦と叫ぶのだ。