絲山秋子『袋小路の男』

袋小路の男

袋小路の男

短編三つを収録。簡潔な文章で繊細な情感を組み立てるのがうまいですねどうも。『袋小路の男』で"私"と"あなた"の物語として語られたストーリーが、『小田切孝の言い分』で三人称で語り直されるのは面白い。『袋小路の男』では文字どおり袋小路の、閉じた関係の中でのある種の安らぎが描かれるけど、三人称の『小田切孝の言い分』になると外の風が吹き込んでくる。明るい光も。
『小田切孝の言い分』に"それから日向子は距離感について考え始めた。"という一文があるけど、この短編集の基調にあるのは人間の距離感についての考察だなーと思った。静かで思索的な『アーリオ オーリオ』もいい感じ。