『松ヶ根乱射事件』


これは面白かった。繰り返します。これは面白かった。

安倍首相は夫婦で映画鑑賞が趣味らしい。この映画も鑑賞してくれないかな。どうかな。無理かな。ここ読んでたらぜひ…読まねえか。まあ万一何かの偶然で目にはいったときはご一考を。

映画の冒頭、女が真っ白な雪の中に倒れている。小学生の男の子がおそるおそる近寄る。触ってみる。動かない。男子なら次はこういうことをやるかな…でもさすがに子供にそんなことはやらせないかな‥と思ってたら、その通りのことを彼はやった。ちょっと驚いた。
どうやらこの映画には悪意が満ちているらしい、ということをその時悟りました。

実際のとこ、最初から最後まで一貫して観客の神経を逆撫でし続けるような映画です。
どうしようもなく不快だが、えらく面白い。

キャスティング素晴らしいです。主演の新井浩文の警察官は無表情で一重の日本人顔。これが画面上ではなんともいえない微妙な不快さを放ってて…大友克洋が描く客観的日本人の顔を思い出した。山中崇の卑しい笑いは身に染みるリアルさ。そして、なんだかすごいことになってる川越美和。この映画では木村祐一と共に、ほとんど神話的なDQNを現出させています。実際あの二人はこの映画の中では神話やおとぎ話の層にいるようにも見える。死なないし。
三浦友和の演じる悪い(としか言い様がない)父親も良かった。ああいう親爺は確かにいるような気がする。

田舎の家のアルミサッシあたりを眺めてると、喩えるなら味のない大きな飴をなめているような気持ちに襲われるけど、この映画はそんな気持ちを余すところなく描いています。
って話が抽象的で分からねえ……それは、たとえばいましろたかしが『トコトコ節』等で描いたあの感覚。どうしようもなくどうしようもない、場所の感覚。

オチもすばらしいです。ブラボー。

どうですか首相この映画。美しい国で誠実に生きる人々の姿を描いた映画です。
いやほんとに!嘘じゃない!

首相以外の方々にもお勧めですが、デートムービーには向きません。それだけはやめとけ。