『叫』
いや面白かった。あまりに面白すぎて不安になったくらい。なんというか、黒沢清にしてはスムースすぎる。実は黒沢清の作風を巧妙にまねた誰かによって撮られてるのではないか、とか。
それにしてもあの警察署内の風景は笑った。どこだよあそこ。工場かな。何やら天井の高い室内に机を並べて警察署ということにしてあるんだけど、無理、というわけでもないけど妙な違和感が残る。絶妙に微妙なズレ具合。面白いねどうも。
画面の色調のベースがブルーとセピアで、これにたまに鮮やかな赤(葉月里緒菜のドレス)が入ってくる。ちょっとエンキ・ビラルの絵を思い出す美しい画面でした。
冒頭の殺人事件。死体となった女がどろりと口から吐く水は『LOFT』の泥を思い出させます。続編か?と一瞬思った。内容的にも『LOFT』に似たものが、というか、この映画は過去のいろんな黒沢作品を思い出させるんですんね。それは『回路』であったり『CURE』であったり『アカルイミライ』であったり。黒沢清カタログ、また幕の内弁当とでも言いましょうか。過去のいろんなテーマ、モチーフがうまく配置されています。
しかし、ちょっとコンパクトにまとまりすぎと違うか、いいのかこれで、と疑わせるところはあります。なんか、全部既に知ってる技でこなしてるんじゃないか、っていうか。
でもまあ、これだけ面白かったら許すよ。
『カリスマ』や『回路』のラストでは「世界の終わり?」という感じだったのが、この作品では「おお、世界が終わった!」と思った。疑問符がとれた。はい、ついに世界は見事におしまいになりました。いやあ、スッキリ。何この、観終えた後の爽快感。
まあ葉月里緒菜の幽霊が、いかにも幽霊風に手を前にだらんと下げて近付いてくるのを横から撮ったカットなんかはあれだ、失笑する向きもあろう。それは確かに笑いますけれども…そんな葉月里緒菜が赤いドレスでひゅうーと空を飛ばれるとさらに困惑しますけど…しかしそんな笑いや困惑も含めて総体として「面白い」。
それにしてもこの映画の幽霊の多彩な撮り方を見てると、この監督はほんとに幽霊のことを一生懸命考えてるんだなあといまさらながら感心しました。いやあ、すごい。
あとメモしておきたいのは冒頭の水たまりの波立つ水面の気持ち悪さですね。小さな描写だけど、実に気持ち悪かった。新鮮な気持ち悪さでした。
何故か暴君ハパネロとコラボしていた。
アンパンマンのこれは赤い服きて飛び回ってるけど別にコラボではない模様。