『パプリカ』

観終えて、なぜか小林まことのマンガを思い出した。なんでだ。 
あの警部のせいか。そういえばあの人は小林まことのキャラっぽかった。少し古いタイプの男っぽさを持っているキャラクター。

パプリカが、小林まことのマンガのキャラクターみたいにあごをがくっと落としてダハァッとしてるところを想像してみる。スクリーンに映らないところではそんな表情も見せてるんじゃないかあの娘は。

と、映画観た後で関係ない妄想を繰り広げてしまうのも、パプリカというキャラクターが魅力的だったから。まあ、役柄がまさに”夢の女”ですからね。そんなパプリカをもっと観たい、と思わせたところで映画は終わってしまう。2時間の映画に慣らされてると、90分って「腹八分目」の長さだな。まあこの映画が描いているように、あんまり長い時間夢に浸かるのは身体に悪そうだ。

昔読んだ原作の細部は覚えてないけど、やけにホモフォビアっぽい要素があった気がするなあ…と思いつつ観たら、やはりちょっとそういう部分があった。まあ同性愛というより病的に肥大したナルチシズムが悪、という構図なのだけど。
どうも全体に物語が基づいている精神分析の枠組みが、ちょっと古くさいんじゃないかという気はする。ただ、その枠組みの中では精緻に構成してあって楽しいです。
たとえばモローの絵に飛び込む場面とか、あるいはコレクターの部屋の"脱皮"の場面とか、夢の自由さで比喩がそのまんまアクションになっていくのは単純に楽しい。鮮やかな"絵解き"が切れ目なく続く快感。

異様に情報量の多い絵が動きまくる画面は、凄いとしかいいようがないです。眼福。
しかし『鉄コン』とこれ続けてみると、アニメの画面の情報量に何か革新が起きてるような気もしてくる。進歩なのかどうかはわかんないけど、アニメも変わりつつあるんだなーという素朴な感想を持ちました。

今敏監督の映画を見るのは初めてなんだけど、隅々まで徹底して明晰な描写は筒井康隆の小説に似てる。もともと似た資質の人なのかな、という気もします。
アニメ版『時をかける少女』が、原作というよりもサブカルチャーの中で醸成されてきた『時かけ』のイメージをネタに自由に創作したのと対照的で、これは筒井康隆の原作にじっくり密着して映像化してる感じ。もちろん、そのまんまの映画化ではなくて、原作をうまく単純化して整理していますが。

エンディングテーマは疾走感に溢れていて大変気持ちいいです。平沢進のサイトで無料公開中。
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