P.G.ウッドハウス『比類なきジーヴス』
- 作者: P.G.ウッドハウス,Pelham Grenville Wodehouse,森村たまき
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2005/02/01
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 29回
- この商品を含むブログ (126件) を見る
で、その時初めて読んだジーヴス物は大変面白かったんだけど、ウッドハウスも日本ではなかなか翻訳されない作家で、その後なかなか出会えなかった。ところが去年急にウッドハウスが新刊で何冊も訳された。文藝春秋のウッドハウス選集と国書刊行会のウッドハウス・コレクション。ありがたいこってす。
とありがたがりつつも金がなくて読んでなかったんですが、先日図書館で出会ったので借りました。読みました。バーティー&ジーヴスとの久々の再会。
そうそう、これだこれだ。なんでも知ってる執事のジーヴス。彼は二日酔いに効く特別の飲み物のレシピも知っている。これには"ウースターソースか何か"が混ぜてあって酔いざめの頭を一発でしゃっきりさせる。初めて読んだときは、ウースターソースが入ってるなんてどんな飲み物なのかねえと思ったもんです。
ジーヴスものは基本的にワンパターンだ。物語の語り手である貴族のおぼっちゃま・バーティーが陥った窮地を、執事ジーヴスが見事な頭脳の回転で救ってみせる。主人より雇人のほうがずーっと賢くて、状況を見通していて、支配さえしている、という構図。これはまあ風刺的と言えば風刺的なんだけど、この関係を登場人物たちが愛してるってのが肝心なとこだ。いや、愛とはちょっと違うかな?ともかくこのシリーズの笑いは皮肉が大いに混じってるけど、最後はみんな英国的な居心地良さの感覚に落ち着く。トラブルにまきこまれて、いやはやひどい目にあったけど、一晩眠って目覚めれば、目覚めの紅茶が運ばれてくる。
『銀河ヒッチハイク・ガイド』の作者ダグラス・アダムスはウッドハウスに最大の影響を受けたという。そういえば『銀河ヒッチハイク・ガイド』の主人公のイギリス人アーサーは、宇宙を引き回されながらも一杯の紅茶をひたすら恋しがっていた。イギリス人はイギリスが好きなのね。あんまりハッピーじゃないとしても。