『1809』佐藤亜紀

1809

1809

佐藤亜紀は『バルタザールの遍歴』読んで「あ、この人すげえ、頭抜けている」と思った。でもその後は全然読まなかった。なんつか、面白いことは既にわかっているので、いつ読んでも大丈夫だと思ったのだ。
というわけで『1809』で佐藤亜紀読むのやっと2冊目。
ナポレオン暗殺計画にまつわる歴史物なんだけど、SFのように読むことができた。主要登場人物のウストリツキ公爵が夢想するのはもう一つのヨーロッパの歴史。主人公は橋を建設する技師だが、ウストリツキ公爵が夢想するのは歴史を構築する要石の破壊ーそしてその後に訪れる状況だ。そういうのって、なんだか、SFだと思うんですよ、うまく説明できないけど。登場人物が「次の時代はどうなる」と考えるのは歴史小説だけど、「歴史の外側に出たらどうなる」と考えるのはSFのような気がする。いや、やっぱり説明になってないが。
まあともかく、大変面白かったです。
トランプで自分の手札を全部見せながら勝負に勝ってしまうような恐ろしい手管がこの作者にはあって、読者はもうただ読み続け、降伏するしかないのだった。