『パンク侍、斬られて候』町田康

パンク侍、斬られて候

パンク侍、斬られて候

あ、『うつうつひでお日記』に出た"秘剣・悪酔いプーさんくだまいてポン"ってこれが元ネタか。
大変面白い。一応時代小説なんだけど自由すぎるほど自由に書かれてる。無意味に転がる文体は筒井康隆『時代小説』、突然出てくる超能力は半村良の妖星伝、クライマックスの妄想が不条理に現実化するあたりは平口広美の劇画みたいだし、暴走する暴徒による破壊シーンは永井豪、主人公のとぼけたキャラが"時代劇ごっこ"的動きを見せるあたりはよしもとよしともの『レッツゴー武芸帳』みたいでござる。もちろん腹ふり党は作者が見たロック/パンクの一つの戯画だろうし、作者が出演した映画の影響も多々見られる。
とまあいろいろ連想するもの多いです。すげえ独創的!という感じではないのだけど、ネタは豊富で生きがいい。
行き当たりばったりの思いつきで進むように見える展開は深みと言うものを一切欠いていて、怒る人は怒りそうだけど、細かいところでうまく笑いをとったり異様なものを出してくるので読んでて飽きない。最後のイメージもまあ唐突なんだけどうまく極まってると思った。