わるもの

ぎっしりつまったゴミ袋を持って、1階に下りようとマンションのエレベーターに乗った。
すぐ下の階でエレベーターが止まって、小さな男の子を一人連れた若い男女が入ってきた。男の子は六歳くらいか。両手に怪人っぽいライダーカードっぽいものを一枚ずつ持っていて、なんだか昭和の子供っぽい。
男の子はくりくりした丸い瞳で私とゴミ袋を交互に眺めると
「この人、ゴミ屋さん?」
と母親に尋ねた。
「これっ」
と母親に小声でたしなめられたが、子供はめげずに
「ゴミ出し屋さんなの?」
とたたみかけた。
私は"ゴミ出し屋さん"という職業を想像した。毎朝戸口からゴミ捨て場までのゴミ運びを代行して小銭をもらうんだろうか。ホームレスの副業っぽい。
やがて子供は手に持ったカードを見てから私を再び見ると
「このひと、わるもの?」
と母親に尋ねた。
気まずい数秒の沈黙の後、エレベーターは1階に着いてドアが開き、親は急いで子供の手を引いて外に出ていった。

ゴミ袋をゴミ捨て場の中に投げ込みながら、自分は子供の純粋な目にはわるものに見えるのか、と思った。そういえば以前道を歩いていて子供に「あの人、泥棒?」と言われたこともある。
そうか。わるものか。
悪の組織の求人に応募して改造でもしてもらうか。