今日の雨はなんだかだらしない。大粒の雨がぼたぼたと落ちてくる。ぼたぼたという音がどうも汚いね。いや、本当にぼたぼたと聞こえるわけではないけど。そんな感じがする。この感じは追求すると深い問題だ。だから追求しないのだった。
山松ゆうきちのマンガでは雨がざんざかざんと降っていた。ざんざかざんと降る雨はたぶん冷たく肌に痛い。雨はずっと同じ速度ですべての屋根を打ち傘を打ち裸の背中を打つ。平等な断罪ぶりが心地よい。なんでもかんでもざんざかざんだ。
今日の雨はそれとは違ってぼたぼたと落ちてくる。ぬるい、口の中の葡萄の粒のような大粒の雨がぼたぼた・ぼとぼと・ばらばら・ぼろぼろと落ちてくる。優柔不断で、不徹底で、めんどくさそうなBの音。

雨の事は良く考える。時には縦方向に考える。
地表から雨雲までの距離は…ええと、2kmくらいか。地球の大気圏はWikipediaによれば大気圏は高度500kmを超える範囲まで広がっているが、宇宙空間との境界は便宜的に高度80kmから120kmあたりとされている。地球の直径は12,756.3 kmだから、地球が卵だとしたら、大気圏の厚みはたぶん卵の殻くらい?そして雲までの高さはそのまたごく一部だ。私達の大部分は卵の殻の厚みから出られないまま死ぬ。死ぬまでの間、殻の厚みの下の方で、上から落ちてくる水に一喜一憂して暮らす。そういうものだ。とヴォネガット風に言ってみる。ヴォネガットはこんなつまらないことは言わない。

マクドナルドに入ったら、出る時に傘立てにさしておいた傘が無くなってた。傘立ての前で客をさばいてた店員のおじさんに困った顔を向けると、「あ、傘が無くなってますか。ではこれをどうぞ。忘れ物で取りに来る人がいないので…」と小汚いブルーのビニール傘を渡された。
ま、無くなった傘もビニール傘でしたけどね。ちょっと釈然としない。受取りましたけど。そうやって他人の傘を采配する店員さん、あなたは誰だ、と思った。忘れ物の傘の神か。そういう神様がどこかにいるような気はする。