アニメフェス最終日

広島駅前にあった看板。『えの素』に出てきた「テレパシー屋」というのを思い出した。

さて、目が覚めたら予定の時間ギリギリだったので、あわててカプセルを飛び出し、荷物をロッカーから引き出して、寝癖で髪の毛が立った頭のまま会場に向かって歩く歩く歩く歩く!
朝から暑いので走るのはやだ。
会場に来てまず観たのは「ベスト・オブ・ザ・ワールド6」。「ベスト・オブ・ザ・ワールド」は一応名作選と言うことなんだけど、実際はそんなにベストという感じでもないです。まあいろんな基準があるからな。

イールズ/マーティン・ラムロウ
男が自分の苦悩を癒す女神像を求めて地上をさまよう。よくできた3DCGアニメだと思うけど、うーん。特に可もなく不可もなし。
ドローイング・ザ・ライン/ヒェクン・ジャン
きっちり線を引くことに取り憑かれた男の物語。オーソドックスながらよくまとまった作品。
シンジュク・サムライ/ポール・ブッシュ
昨夜のコンペ作品「セントラル・スイス」と同じ人。趣向も同じで、新宿で様々な人の顔を画面の中央において低速度撮影している。むしろ撮影の様子に興味があるな。
ア・シャドウ・イン・ザ・ソウル/フェルナンド・ガルリット、ホワオ・ラモス
あれ、これどんなんだっけ。内容忘れてしまった。
ワン・トゥー・スリー・ダスク/フェリックス・ドウフォーフラペリエ
絵画的な作品。この手の"動く絵画"風の作品はコメントしづらいですね。別に、観て不快というわけではないのだけど。
マッチ売りの少女/ロジャー・アレス
完璧なディズニースタイルによる『マッチ売りの少女』のアニメ化。特にひねりはありませんが、普通に楽しめました。楽しめたといっても『マッチ売りの少女』ですが。これが長編アニメのパイロット版だったら恐いだろうな。2時間ものの『マッチ売りの少女』。
アモング・ストレンジャーズ/ナオミ・ウィルソン
確かガラスの上の砂絵でアニメーション作ってる人じゃなかったかと思う。漁村の物語。アシカが無気味で、なおかつかわいい。
オープニング・タイトル・フォア〜/セルゲイ・メリノフ
ごく短いタイトル作品。内容忘れたけどそれなりに鮮やかだったような気はする。
ザ・チェインバー/セオックヒュン・ユ
机の上の模型の小さな扉に男が手を突っ込むと、男のいる部屋の扉が開いて外から巨大な手が侵入してくる。アイディアが楽しい3DCGアニメ。
レッド・ハンディッド/ソフィ・デュポン
脳天気な"愛があれば全て良し"的お話で、フランス人はこーゆーのを飽きずに作り続けるよね。そんなフランス人が好きです。
ドリーマー/オルガ・マルチェンコ
これも内容すっかり忘れてる。
ザ・カーニバル・オブ・ジ・アニマルズ/ミカエラ・パブラトヴァ
「動物の謝肉祭」にあわせて綴られるシモネタオンパレード。もう初めから終わりまでチンマンだらけですが、罪がなくて楽しいです。子供には見せられないけど(でも子供連れの観客もいた)。
ジ・アロマ・オブ・ティー
音楽に合わせて画面の上を粒子がゆっくり流れていく。ははぁ香りの粒子の運動を描いてるんだな、最後に鼻腔に入って終わるに違いない。と思ったけど違った。
メニュー/ジョアナ・トステ
内容忘れてしまいました。
ジュディ・ジェディ/百瀬義行
ジブリの百瀬監督とCapsuleの音楽のコラボで描く未来世界。これは面白かった。さっすがジブリ、ということでもあるけど、日本のアニメはやっぱりSFやらせると世界的にも上手い気がする。昔は、外国の方がSFだと思てったんだけどな。

続いて「現代日本のアニメーション1」
時間の都合でプログラムの途中から観る。

tough guy! 2005/岸本真太郎
途中から観た。超タフなカマキリが街中で他の虫と戦う。サービス精神に溢れていて面白い。ただ、音声がいかにも自主制作映画風だったのがちょっと残念。まあ味といえば味ですが。
GAKI琵琶法師/横須賀令子
餓鬼がエレキ琵琶を演奏する。演奏部分のアニメ(音楽に合わせた抽象的イメージの連続)より、最初と最後の餓鬼の方が良かった。餓鬼をもっと動かして欲しかった。
サムロイド・ゼロ/阿部雄一
川で戦う未来風サムライ(サムロイド?)。光沢ギラギラの3DCGアニメ。敵の刀が二又に開くギミックがステキでした。
ア・パート・オブ・スペース/一色あづる
あれ、どんなんだっけ。何か優しげな画面だった気がしますが思い出せません。
こどものたび/高橋慶
グロテスクな子供たちが動き回る小宇宙。風変わりなイメージは面白かったけど、まとまりに欠ける印象。
スクラップランド/ダイノサトウ
スクラップで構成されたユニークな動物たちの群。楽しいんだけど、同じ種族の動物は1〜2種類のモデルをコピーして増やして群れにみせているのが、ちょっと物足りない。どうせなら個体差をちゃんと作り込んでほしかった。手間は大変ですけど。
ODEKI/山路直樹
尻尾のように長くのびたイヤなおできを生やした男の物語。どうにも下品だなぁ。わざとだろうけど。
優しい兵隊/前原薫
草花には優しく、敵兵には冷酷な兵隊。メッセージは明確だけど、うーん。
アニマ/ホッチカズヒコ
今年の文化庁メディア芸術祭で入賞したやつ。これですな。宮谷一彦がアニメ作ったらこんなんなりそうな。
テディ/古川タク
坊やがお気に入りのテディ・ベアは、坊やが眠った後、人知れず戦っているのだった。かわいくて、ものがなしい。しかし、テディは誰と戦っているのだろう。
ドットジャンキー/菅原正
スタイリッシュな絵で描かれたSF。抽象的でスタイリッシュな絵なのに、雰囲気モノに終わらずにちゃんと起承転結があって面白いのが偉い。やはり日本人はアニメでSFやらせると上手い気がする。

会場横の川面を眺めながら昼食を食べた後、「現代日本のアニメーション2」に突入。

How to Jump/真島理一郎
「スキージャンプ・ラージヒルペア」の人が撮ったアウディのCM(?)。画面はハイクオリティ、ネタは普通。ほんとにすごく普通。
彩-SAI-(前編)/西部勲
色鮮やかなCGアニメ。ちょっとシャイノーラのアニメを思い出した。
デスクトップ/佐藤義尚
MacOSXのデスクトップを素材にしたアニメーション。デスクトップの上でウインドウが揃って動き出す。単純なアイディアながら楽しい。これ、ひとつひとつスクリーンショット撮って作成したのだろうか。知人に言われて気付いたけど、作者の佐藤義尚は、かつて『Papers』で有名になって(私はえび天で観ましたが)同じ手法で読売新聞のCMを製作したりした人。
ルール・オブ・ローズ
昨夜のコンペで観たので略。
藍の路/村田朋泰
人形アニメ「朱の路」の人ですな。いろんなシーンがあってそれなりにドラマがあった「朱の路」に比べると、ずっと地味で動きがない印象。画面は静かで美しいけど、ストーリーは掴みづらいものがありました。
どりーむ・すとれーじ/大井文雄
なにやらフラクタルっぽいCGが続く。キレイではありますが…う・うーん。昔のCG、という感じだった。
有機都市/中西善久
静かな住宅街の中で動き出す奇怪な機械たち。実写の風景の中で奇妙なモノがうごめくというアイディアは面白いと思うんで、始まったときは期待したけど、いまいち面白くならなかったな。実写との合成も甘かった気がする。
鉄路の彼方/御影たゆた
う、これは正直ツラかったです。どこがどうとは言いにくいんだけど。ストーリーと演出と声の演技が私は苦手だ。でもDVDとか出てるのねこれ。

さて、ツラくなりつつも次。スケジュール的には「学生優秀作品集7」か「ルツェルン工芸大学学生作品特集」か「インフォメーションBOX2006」か。
学生作品は当たり外れが大きくいので、ベテラン勢の「インフォメーションBOX」に入ってみた。「インフォメーションBOX」は、このアニメフェスの審査員の作品を上映するプログラム。

「小さな少女と子猫と赤ちゃん」他/ペンチョ・クンチェフ
独特の線で描かれるアニメーション。赤塚不二夫的な破壊的ギャグ作品「テレビスタジオの赤ちゃん」はとても楽しかった。「青い目をした月」は神話時代の少女を描く作品で、エロティックな情景が次々と描かれる。そーいやギリシャ神話の神々はそういうことばっかりしてるよね。ただの風景がエロティックな光景にだまし絵的に変わっていく様子を見ると、作者は何を見てもエロく見えてしまう人なんではないかという気もした。でも屈託なく大らかに描かれているので、印象はさわやかです。
「チュチュ」/ジョルジュ・シフィアノス
醜く孤独なクソガキの生活。これはすばらしかった。子供を取り巻く不条理で暴力的な世界を力強く描く。風景も人間も皆歪んでいる。でもその底には詩情がある。
「美術館」他/ペドラ・ドルマ
「美術館」は美術館に入った人物の経験と変容を軽妙に描く作品。もう一本の「ヒストリー・オブ・ネザーランド」は明るく軽快に描くオランダ史。当然ながら「国土を作る」ところから始まる。植民地搾取の歴史もかる〜く扱っちゃってて、なんだかすげぇと思いました。
「爆心地/聖地」他/キャレン・アクア
力強い抽象的グラフィックを駆使したアニメーション。ストーリーはないけど見ていてそれなりに楽しかった。
「ケイヴ」他/奥井宏幸
うーむ。私にはあいませんでした。CG等でプロモーションビデオとか作ってる人なんだけど。上映作品は8本ほどあって、次こそは少しは面白くなるんじゃないか、と思いつつ最後まで観たんだけど、どうも最後まで私は駄目でした。

どうもプログラムの最後の方でコケてるみたいですな私は。
次は「フィル・ムロイ特集2(上映とトーク)」の会場に入った。
こちらのプログラムはもう終わりかけていて、あと数本の上映を残すのみ。

変化の風
実在の(多分)社会主義国の音楽家の回想をもとにしたアニメーション。音楽家の感じた怒りと不条理が強く伝わってくる内容。荒々しい絵とサウンドの相乗効果が実にかっこよかった。しまった、「インフォメーションBOX」を早めに抜けてこっちのプログラムを最初から見るべきだったかも。
椅子の性生活
タイトルどおりの作品。椅子のオナニー、セックスにはじまって、フェティシズム、SM、獣姦(椅子×テーブル)ペドフィリア、しまいにゃネクロフィリアまで描かれる。静かな口調で語られる不条理なユーモア。
季節のあいさつ
作家からクリスマスのあいさつ。
愛は不思議なもの
二人の手品師が競い合ううちに、事態は予想もしない方向に展開する。子供向けだから暴力的だったりエロだったりはしないけど、常識から逸脱したユーモアセンスは他の作品と同じ。

観た限りでは好みの作風だった。失敗したな。「インフォメーションBOX」よりこっちを優先して観るべきだった、と後悔。

で、残るは最後のプログラム、表彰式・閉会式・入賞作品上映。
グランプリは昨夜観た『ミルク』でした。この手の不条理っぽいアニメがグランプリを穫るのは珍しい気がする。わりと意外。
でもまあ、ここのグランプリは毎回意外といえば意外です。
ヒロシマ賞は韓国の『ウルフ・ダディ』。トトロっぽい平和なアニメでした。これなら別に優秀賞あたりでいいのでは、という気もしたけど、まあ平和というヒロシマ賞のテーマにはふさわしいかも。この作品の会場での人気は高かった様子。
デビュー賞『バードコールズ』。野鳥の鳴き声が細やかな記号の群れのアニメーションを作り出していく。これはかなり好きな作品。
ルネ・ラルー賞『ザ・レギュレーター』前々回のフェスでこの監督の作品見たな。白黒のグラフィックの印象は強烈だけど、ちょっと単調。
その他の受賞作では、えーと優秀賞だったか審査委員特別賞だったかわすれましたが、『技』という作品が面白かった。視覚と運動の見事なアクロバット