マンガと差別的表現

これはマンガでは常に問題になりうる。
マンガにおいて類型的な表現をうまく使うことは大事だ。あるキャラクターを描く時、そのキャラが属する人種や階層や集団の特徴をうまく利用してキャラを立たせたいと思うのは自然なことだろう。黒人は黒人らしく、アラブ系はアラブ系らしくetc.。そのディフォルメにはどうしても社会的なレベルでの“政治”が影響を及ぼす。その“イメージの政治”をいかにうまく利用しつつ裏切るか、を作者は考えなければならない。

別に差別的表現を一律に規制・検閲するべきだとは思わない。山野一唐沢なをきの差別ギャグなどは好きだし、差別は物語を生み出す重要な要素でもある。そもそも、現実世界の“政治”が押し付けてくるものにマンガが無条件に従うべきだなんて思わない。
ただ、外からの批判に対して言葉を用意しておくべきだとは思う。無邪気に「面白いからいいじゃないか」と楽しんでいられるのは、小さな村の中だけの話だ。そして、マンガというメディアはもう、小さな村の中だけにはおさまらなくなっているんじゃないかと思う。

漫棚通信での指摘はその点で大事なものだと思うのだが、『エマ』自体を告発・糾弾しているもののようにとられて反発を受けているようだ。全然違うと思うのだが。