雑誌『03』1991年11月号、特集"テレビ"

dice_que2006-02-01


古いハードディスクの中を掘ったら、新潮社が1991年に出してた雑誌『03』の中の、岡崎京子のコラムをテキストデータ化したものが出てきた。

雑誌『03』についてはこちらをどうぞ。
http://www.sg-tokyo.com/archive/03/

『03』1991年11月号の特集は"テレビ"だった。その中に有名人が架空のテレビ局を作り、番組表を構成するという企画があって、岡崎京子もよいこTVという局の番組表を作り、短い文章を寄せている。
他の執筆陣は根本敬島田雅彦鴻上尚史J.G.バラードなど。

バラードが出てくるとこがすごいね。バブルだねぇ。

なんで私が岡崎京子のとこだけテキスト化してたかというと、単純にファンだったからです。いつかどこかで紹介しようと思ったまま忘れてた。

で、多分この文章は岡崎さんの単行本やムックには収録されてないと思うので、以下転載しようと思います(でも問題があれば引っ込めますのでその点ヨロシク)。

よいこTV番組表(『03』1991年11号、新潮社より転載)

5:00 朝のシアター「お早よう」 杉村春子ほか
7:00 温泉対談※ 第99回 井伏鱒二水木しげる
30 フリキュラ・マシーン ハウスでかぞえ歌 意地悪しよう ※小山田君と小沢君
8:00 今日の紀子様
15 朝の連ドラ ガチャピン一代記 ガチャピンとムックほか
30 岸辺のアルバム
9:30 トキメキ奥様劇場 「嫁姑唐獅子牡丹戦争・あたし達なんてどうせ」
10:55 自殺講座「ガス」
1:00 クイズ・ただでガッポリ
45 料理 腸づめと丸焼き 講師 P‐グリーナウェイ先生
2:00 笑ってる場合ですよ※ ツービート洋七・洋八ほか

1:00 ソープ・オペラ「デウィッド・リンチの花の宴の後に」ミポりん としちゃん 戸川純 佐藤慶 芦屋雁之助
2:00 ひまつぶしアワー 有名人のお葬式特集 サイキックTV占い 今日のTelショッピング スケパンとゴムパン 家庭SMとは?
3:30 未来少年コナン
4:00 立花ハジメのアニメ・メガミックス「ひみつのドラえもんがエースをねらってグレート・マジンガー白雪姫」音楽・鄭東和さん
5:00 ハレンチ学園
6:00 刑事(デカ)まる子ちゃん
30 TVに出たいやつはみんな来い!! 君も10万円で15秒TVに出られる 今日は誰だ!!
7:00 デヴィッド・バーンの仮装大賞 提供・津村順天堂
8:30 クイズ5人に聞いたよ
9:00 ドッキリドキュメント「お金あげる」貧乏人に命と引き換えに5億円あげたら!? 期限は1年、さあど一なる!!
10:45 加藤賢崇の不味いもの万歳!! ゲロそば
11:00 夜の青春ドラマ「困ってしまってワンワンワワン」 山本太郎メロリンQ)大木知之
30 ギャルギヤル※たいむ 「マワされ自慢」あたしこの前ベロベロになってヤられちゃって頭来たけど、ま、いっか 六本木より生中継
1:25 リカちやんのもしもし精神科 抜毛症
2:00 夜はイタコで 涙の対面!! 小溝安二郎VSヴィム・ヴェンダース
3:00 批評宇宙 トリオ・ザ・インテリ 浅柄蓮
30 オナニー講座 左手
45 ヒストリーofミッドナイト・ピープル イーディ・セジウィック
4:00 阿修羅の如く※

岡崎さんの文章(『03』1991年11号、新潮社より転載)

 私がTVを面白がっていたころは、まるでアッパーな興奮剤みたいなところがあった。だから、全体的にはその時代の思い入れの再現のような番組編成になっている。当然今はかつての興奮が、すっかり醒めてしまっているというか、むしろTVに苛立ちさえ感じることの方が多い。だってのろいんだもん。今のTVに「愛」は感じません。
 ようするに今のTVは、ネタ切れ。もう見え透いた一見新しいこと(実はもう古くてたまらないのに)など考えずに、一日中かつて人気のあった番組を再放送することもありなのでは、と思う。ヒップホップのDJみたく音源をリミックスしてうまく新しい音楽を作るようにね。だってバクダイな情報がTV史30余年の中に眠っているのだし、しかもそれらの番組を初めて見る世代の人たちには、かえって新鮮に映ると思うし。TVがそれを模索していたころに持っていたテンションの高さは、もはやもう望めないのだということはすでに前提としてあるのだ。
 というわけで私が編成した番組表にも、再放送の番組がいくつか彩りを添えていますね。これは私のかつてあったTVへの愛の証とも言えるでしょう。また、他に見たい番組として挙げているものでも、今さら奇を衒ったものではなくて、注目しているキャラクターの人物やその人たちの組み合わせの妙で、ことさら演出のわざとらしさが鼻につくことなく見られそうなものを考えてみましたよ、というか私が見たい!と思っているものですね。
 例えば、『デヴィッド・バーンの仮装大賞』も、彼のあのへンテコで変わったキャラクターなら、やってくれるなと思って。彼はアカデミックで時代の最先端を行く感性とすごく下世話な部分を併せ持っていて、あるインタヴューで、彼は日本のTVも見ていて、あの欽ちゃんやドリフターズなんかが好きだと答えているというし。だから、被も含めて“仮装”ということで他の登場人物とどんなトンチンカンなものを見せてくれるかが楽しみだ。私としてはアリス・クーパーとかケイト・ブッシュに出てもらいたいな。
 またデヴィッド・リンチのソープ・オペラにしてもそうだが、彼らアメリカ人のどこか自分たちを遠くから見ている視線で描き出す、清潔な狂気のような感覚こそ、これからの日本のTVに残されたひとつの重要なテイストだと思うのだけど。
 まあTVが「巨大なメディア」とまだ思っていて、見せてやる、という態度でいると誰もTVなんて見なくなっちやうよ、とも思いつつ考えてみました。TVはもっとクールにメチャクチャになるべきだと思います。

おまけ


YouTubeより

Kyoko Okazaki at Tv Show "Ugo Ugo Lhuga"

http://www.youtube.com/?v=8eptwnsWrdc


で、上の岡崎さんのコラムは、Youtubeのようなサービスの魅力をうまくいい当ててる気がします。


ところで、上のウゴウゴルーガのビデオをアップしてる方のビデオはラインナップがなかなかおもろいです。