長嶋有『パラレル』『ジャージの二人』

パラレル

パラレル

ジャージの二人

ジャージの二人

長嶋有読んだ事なかったんですが第一回大江健三郎賞受賞をきっかけに読んでみた。とりあえず近所の図書館にあった二冊。うん、面白いじゃないですか。
会話がカギカッコの中に入っていたり入ってなかったりする。その効果は少女マンガのコマ割で枠線が解体されモノローグと背景が曖昧に溶け合っていくのにちょっと似てる。発言と内言があいまいになる感じ。あと文末の過去形と現在形が常に混在している。これは文の調子に繊細なヴァリエーションを与えると同時に、小説の語られる現在に揺らぎや幅をもたらしているっつーか、えーうまく言えないけど、ともかくこういう細かい工夫が面白いな、と思いました。小説を書く方法に対してとても意識的な感じ。描かれるのは基本的に世間から半歩ほど脱落した男のゆるやかな、力の抜けた時間なのだけど、それを描く為にかなり周到にいろんな要素を設計している。そういえば『ジャージの二人』の軽井沢の空間はRPGっぽい感じでもあるな。携帯の電波が入ってくるスポットのエピソードとか。このへんはゲームライター・ブルボン小林長嶋有の別名)の顔も見えたような気がした。